02 今、注目するべき構法の家。 板倉造りの家
地震大国日本だからこそ、必要とされる伝統構法。
耐震性能が証明された板倉の家。
従来の建築では実現できなかった、しなやかに、
ゆっくりと揺れを吸収する“耐震性能”を持っています。
数値で証明するに至るまで
私が伝統構法に軸足を置く様になった一番のきっかけは、1995年1月17日の早朝におこった「阪神大震災」です。
法律どおりに「筋交い」(又は合板)や金物でつくられた建物が無残にも壊れてしまっている光景は、今までの自分の設計活動に疑問を持つほどにショックを受けました。
その後、国や大学が木造の研究、実験を繰り返す様になり、伝統構法の「耐震性能」や木造のねばりが立証される様になりました。
今まで、大工さんの勘にたよっていたもののほとんどが、数字で表せる様になったのです。
板倉造りの家とは
一番のポイントは伊勢神宮に代表されるような伝統構法であること。
「落とし板の構造特性」(元 名古屋大学教授 平嶋 義彦先生)の論文を何回となく読み、「日本の気候風土に適し、地震に強い」という確信を得る事が出来ました。
昔から伝わる伝統構法は、木の特性である「粘り」に期待をしていました。
それは木のめり込み(横圧縮)です。板倉造りの家は伝統構法の特性を持っています。
板倉造りの効果・特徴
板倉造りは、横からの力に対して
横圧縮で吸収する構法です。
柱や土台、梁等の軸組に溝を掘ります。
そこに厚さ30mmの杉板を落とし込むことを、落とし板構法(板倉造り)と言います。
この構法は、地震や風などの水平力に対して、木材が唯一粘りを発揮する横圧縮で吸収する構法です。
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従来の場合
力が加わる点が集中する為、損傷が大きくなる。
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落とし板構法
大きな地震が来ても分散されて力が加わる為、損傷は比較的小さくなる。
「板倉造り」はやわらかい材料からなるやわらかな構造です。
同時に、軸組の中に据えられた溝の中にこの杉板が納められている為に、脱落や剥落などの構造体の耐力の急激な減少につながる破壊を生じません。
これは昔からの伝統構法である「貫構法」に似たところがあります。
伝統民家で伝えられてきた耐震性能は、この「貫構法」に代表される木(特に杉材)の持つ柔らかさ(メリコミ)を生かす「しなやかな」構造なのです。
板倉造りの経済性
東海林建築設計事務所で使用する板倉材は、徳島の中千木材にお願いしています。
徳島は、以前より足場板の生産地で有名な所です。その技術と長年の試行錯誤の末に生まれた乾燥方法でのスギ材を使用しています。
厚さ30mmの杉を、床、壁、天井に共通とし、同材を多く使用することにより、コスト削減に結びつけたいと考えました。
床、壁、天井に厚板を使用するという事は、下地材を兼ねます。
床であれば“根太”、壁であれば“胴縁や間柱”。天井も、下地材が仕上材になっています。
板倉の壁は、建前の時の状態がほとんどの仕上げになります。
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01建て込み
パネル化された板倉材は上棟時に建て込まれます。
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02落とし込み
建て込み中の板倉材。
柱の溝(みぞ)に落とし込んでいきます。 -
03梁をかける
板倉と落とし込んだ後に、梁(はり)をかけていきます。
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04上棟準備完了
1階が土壁&小舞(竹を組んだ下地)、2階が板壁と上棟準備がほぼ完了した状態です。梁と桁はわたりあごで組まれ、きれいな木組みに仕上がっています。
板倉造りの家は気持ちがいい-室内環境- 「木の家は気持ちがいい」と言われるのには、この3つが大きく関係しております。
調湿効果
日本特有の高温高湿の気候風土には、木材の調湿能力は最適な室内環境をつくってくれます。古来からの建築材料の土や紙も同じです。
木の調湿機能は表面の2~3mmの厚みで行っています。例えば、120mm角×3mの柱ですと、なんと牛乳ビン一本分の吸湿効果があります。
断熱効果
木は、調湿効果が室内湿度を軽減し、断熱効果とあいまって、心地よさが増します。
杉材には、10kgのグラスウール程度の断熱効果があると言われています。特に杉は、中の道管の多さからその効果が高いです。
防火性能
壁に通す3cmの杉板の裏側に耐震性能を出すために2.4cmの杉板をクギ打ちします、合計で厚さ5.4cmになります。
これで防火性能があると国が認めてくれました。木は0.6mm/分の燃焼スピードが確認されこの厚さは燃え抜けていかない厚さになります。