01 木を組む事
何故、木を組まなければ
ならないか?
阪神大震災で壊れた在来工法の建物群の光景は、「筋交い」や「金物」に疑問を持つ事になりました。
それは、構造体が固くなり「力対力」の構図です。自然の力にはかないません。
それに頼らない構法が、「伝統構法」です。それは、木を組む事からはじまります。
それは建物がしなやかに揺れ、地震や風のエネルギーを外へ逃がす、柔らかな構造に他なりません。
そして、それは木の最大の特色でもある、木がめり込む柔らかさからくるものです。
伝統構法と在来工法の違い
在来工法は、その耐震性を「筋交い」や合板と金物でつくっています。それは、地震や風の自然の力に対して、突っ張った効果を出そうとしています。
伝統構法とは、
「木を組む」事によってつくります。
梁と桁の「渡りあご」。壁には「貫」。床下は「石端だて」や「足固め」と言った、木と木を組む構法です。これは本来の木の特色のしなやかなめり込みを生かすものです。
その他、この地方ではよく見る土壁も古くから使われている壁材料です。
この壁は土の下地に貫と「竹小舞」と言う竹を編んだものを取り付けます。
当然これも柱を曲げようとする力をサポートしてくれるわけです。
私が良く使う「板壁」も同じように、柱と柱の間に落とし込んだ板が柱と一体になって粘る構法です。
木組み
直行する梁や桁と柱で、渡りあごで組み、曲げの力に対抗します。
横架材(おうがざい)の継ぎ手は長ほぞの車知栓(しゃちせん)で組みます。この様な組み方は横の力に対して、柱を曲げようとする力に充分対抗します。
長ほぞ・込み栓
土台と柱。梁と柱の接合部は、この長い「ほぞ」によって横の力に対抗します。
足固め
土台と足固めの2本の横材と、幕板(ダボ打ちしてあります)で足元を固めています。
貫(ぬき)
左図の貫は、3cm×12cmあります。
この上に小舞(竹を組んだ下地)を取り付けて土壁を塗ります。これにより筋交いの入った壁以上の耐力がでます。
筋交いとは?
筋交いは力に対して力で対抗する工法であり、自然の力には勝てません。
今まで、大学や民間で行なわれる色々な実大実験を見ていると、建物が傾く角度の*層間変形角が*1/25~1/30で、柱の傾斜復元力の限界を越えてしまい、筋交いのどこかしらが壊れます。
筋交いそのものが折れたり、柱や土台に取り付けた部分が外れたり、或いはその部分が座屈したりします。
それだけならまだしも、壊れたり折れたりした部分が関係の無い間柱や壁を壊してしまいます。外れなくても逆にがっちり取り付いた筋交いは、柱と梁の取り付いた部分を押し上げて壊したりもします。
構造体を壊したり筋交いが折れたりするのは筋交いに圧縮の力が働く時です。
逆に”引っ張り”ではそれをとめているビスや釘、ボルトが効くようになりたいのですが木材の繊維方向にはなかなか効かない。
私達が勧める「杉材」は特にです。現場で筋交いは色々なところを金物やボルトで補強しますが、実験で観測するとどこが壊れるかの予測がつかない。予測がつかないということは、ある意味、場当たり的な補強方法になるのかもしれないです。
構造体がゆれて地震エネルギーを吸収する。 建物が傾く程に、建物が持っている力は増していく。
木を組む事の耐震要素は、柱の曲げ・材料(柱や貫)のめり込みにあると思っています。
曲げや、めり込みを出せるのは、木材そのものの特徴です。
それを最大限生かした構法が伝統構法になるわけです。
例えば、1階と2階の高さが3メートルあるとします。
在来工法の場合は層間変形が1/25~1/30なので約7.5cmから9cm横にずれますと壊れてしまいますが、木を組んだ場合は1/10以上(横のずれ約30cm以上)であっても壊れることはありません。
伝統構法はしなやかな粘りで、
自然の大きな力にも対抗できる構法です。
いままで「伝統構法」は構造の解析が法律に阻まれておりましたので、在来工法と同じ様に筋交いや金物を使用していました。
本来『伝統構法』というのは、『足固め』や『貫』『長ほぞ』などで、
本来木材の持っている柱や梁の曲げで構造耐力を持たしています。
やはり木を組む事は、大工さんに受け継がれてきたワザで可能になります。
そんな「すまいづくり」をお勧めしていきたいです。